2007.01.24 Wednesday
2007.01.17 Wednesday
北原白秋(17)
2007.01.09 Tuesday
北原白秋(16)
2006.12.22 Friday
北原白秋(15)
2006.12.21 Thursday
北原白秋(14)
2006.12.20 Wednesday
北原白秋(13)
2006.12.19 Tuesday
北原白秋(12)
2006.12.18 Monday
北原白秋(11)
2006.12.08 Friday
北原白秋(10)
2006.12.07 Thursday
北原白秋(9)
2006.11.23 Thursday
北原白秋(8)
2006.11.22 Wednesday
北原白秋(7)
2006.11.21 Tuesday
北原白秋(6)
青い小鳥
知らぬ男のいふことに、
青い小鳥よ、樫の木づくり、わしの寢床が見馴れたら
せめて入日につまされて鳴いておくれよ、籠の鳥、
牛乳が好きなら牛乳飮まそ、
野芹つばなも欲しかろがわしの身體ぢやままならぬ。
何がさみしいカナリヤよ、
――よしやこの身が赤い血吐いていまに死なうとそなたは他人。
じつと默んだ嘴にケレオソートが沁むかいな。
死んだ娘のいふことに、
青い小鳥よ、擔荷の上のわしの姿が見えぬとて
ひとの涙のうしろからちらと鳴くのか、籠の鳥、
弔むそなたの眞實は
金の時計か、襟どめか、惜しい指輪の玉であろ。
何がかなしいカナリヤよ、
――よしやこの身が解剖をされて墓へかへろとそなたは他人。
やつといまごろ鳴いたとて死んだ肌がなんで知ろ。
わしの從兄弟がいふことに
青い小鳥よ、樫の木づくり、おなじ寢どこに三人まで
死ぬる命の贐に鳴いて暮らすか、籠の鳥、
ケレオソートにや馴染みもしよが、
いつも馴染まぬ人の眼が今ぢやそなたも厭であろ。
何がせはしいカナリヤよ。
――よしやこの身が冷たくなろと息が締れよとそなたは他人。
死なぬさきから鳴かうとままよ、あとの二日でわしも死ぬ…………
2006.11.17 Friday
北原白秋(5)
2006.11.16 Thursday
北原白秋(4)
2006.11.15 Wednesday
北原白秋(3)
2006.11.14 Tuesday
北原白秋(2)
photo by yoshihiro ohmura
室内庭園
晩春の室の内、
暮れなやみ、暮れなやみ、噴水の水はしたたる……
そのもとにあまりりすに赤くほのめき、
やはらかにちらぼへるヘリオトロオブ。
わかき日のなまめきのそのほめき静こころなし。
尽きせざる噴水よ………
黄なる実の熟るる草、奇異の香木、
その空にはるかなる硝子の青み、
外光のそのなごり、鳴ける鶯、
わかき日の薄暮のそのしらべ静こころなし。
いま、黒き天鵝絨の
にほひ、ゆめ、その感触………噴水に縺れたゆたひ、
うち湿る革の函、饐ゆる褐色
その空に暮れもかかる空気の吐息……
わかき日のその夢の香の腐蝕静こころなし。
三層の隅か、さは
腐れたる黄金の縁の中、自鳴鐘の刻み……
ものなべて悩ましさ、盲ひし少女の
あたたかに匂ふかき感覚のゆめ、
わかき日のその靄に音は響く、静こころなし。
晩春の室の内、
暮れなやみ、暮れなやみ、噴水の水はしたたる……
そのもとにあまりりす赤くほのめき、
甘く、またちらぼひぬ、ヘリオトロオブ。
わかき日は暮るれども夢はなほ静こころなし。
2006.11.10 Friday
北原白秋(2)
2006.11.09 Thursday
北原白秋
邪宗門秘曲
われは思ふ、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。
黒船の加比丹を、紅毛の不可思議国を、
色赤きびいどろを、匂鋭きあんじやべいいる、
南蛮の桟留縞を、はた、阿刺吉、珍酡の酒を。
目見青きドミニカびとは陀羅尼誦し夢にも語る、
禁制の宗門神を、あるはまた、血に染む聖磔、
芥子粒を林檎のごとく見すといふ欺罔の器、
波羅葦僧の空をも覗く伸び縮む奇なる眼鏡を。
屋はまた石もて造り、大理石の白き血潮は、
ぎやまんの壺に盛られて夜となれば火点るといふ。
かの美しき越歴機の夢は天鵝絨の薫にまじり、
珍らなる月の世界の鳥獣映像すと聞けり。
あるは聞く、化粧の料は毒草の花よりしぼり、
腐れたる石の油に画くてふ麻利耶の像よ、
はた羅甸、波爾杜瓦爾らの横つづり青なる仮名は
美くしき、さいへ悲しき歓楽の音にかも満つる。
いざさらばわれらに賜へ、幻惑の伴天連尊者、
百年を刹那に縮め、血の磔脊にし死すとも
惜しからじ、願ふは極秘、かの奇しき紅の夢、
善主麿、今日を祈に身も霊も薫りこがるる。
2006.11.09 Thursday
日々の戒め(70)
2006.11.08 Wednesday
萩原朔太郎(21)
2006.11.07 Tuesday
萩原朔太郎(20)
2006.11.06 Monday
萩原朔太郎(19)
2006.11.04 Saturday
萩原朔太郎(18)
2006.11.03 Friday
萩原朔太郎(17)
2006.11.02 Thursday
萩原朔太郎(16)
2006.11.01 Wednesday
萩原朔太郎(15)
2006.10.31 Tuesday
萩原朔太郎(14)
2006.10.27 Friday
萩原朔太郎(14)
見しらぬ犬
この見もしらぬ犬が私のあとをついてくる、
みすぼらしい、後足でびつこをひいてゐる不具の犬のかげだ。
ああ、わたしはどこへ行くのか知らない、
わたしのゆく道路の方角では、
長屋の家根がべらべらと風にふかれてゐる、
道ばたの陰気な空地では、
ひからびた草の葉つぱがしなしなとほそくうごいて居る。
ああ、わたしはどこへ行くのか知らない、
おほきな、いきもののやうな月が、ぼんやりと行手に浮んでゐる、
さうして背後のさびしい往来では、
犬のほそながい尻尾の先が地べたの上をひきずつて居る。
ああ、どこまでも、どこまでも、
この見もしらぬ犬が私のあとをついてくる、
きたならしい地べたを這ひまはつて、
わたしの背後で後足をひきずつてゐる病気の犬だ、
とほく、ながく、かなしげにおびえながら、
さびしい空の月に向つて遠白く吠えるふしあはせの犬のかげだ。
2006.10.26 Thursday