宮沢賢治(3)



 永訣の朝


けふのうちに
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
   (あめゆじゆとてちてけんじや)
うすあかくいつそう陰惨な雲から
みぞれはびちよびちよふつてくる
   (あめゆじゆとてちてけんじや)
青い蓴菜のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがつたてつぱうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
   (あめゆじゆとてちてけんじや)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちよびちよ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
   (あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
 銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
……ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまつしろな二相系をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
   (うまれでくるたて
    こんどはこたにわりやのごとばかりで
    くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ

日々の戒め(33)



過ちや手違いが起きても気を落とすな。
自己の過ちを意識することほど勉強になることはない。
それは自己教育の最大の方法の一つである。
(カーライル)

梅屋町 津島神社



青汁スタンド前を西に向かい、昭和通りを渡ってすぐのところに梅屋町津島神社はあります。創建は天明五年(1785年)とあり、江戸時代の四大飢饉の一つ天明の大飢饉の頃。食料不足と物価の高騰が深刻化し、全国各地で打毀しや一揆が頻発、飢餓や疫病で数十万人が死亡するというなかで、疫病よけの神として素戔嗚尊(スサノオノミコト)を勧請した(来てくださいとお願いした)ものだそうです。写真ではわかりにくいですが、1階を駐車場にしてその上に社が建てられていて、ちょっと窮屈な感じです。「今の世の中疫病は余り流行らないので、この程度で我慢して下さい」ってなところでしょうか。でも、御利益は商売繁盛から合格祈願まで盛りだくさん。

宮沢賢治(2)



報 告

さつき火事だと騒ぎましたのは虹でございました
もう一時間も続いてりんと張っております

日々の戒め(32)



放縦な精神は、
完成の清く高い境地をめざしても無駄であろう。
偉大なことを欲するものは、こころを集中しなければならない。
制限の中にはじめて名人が現われる。
そして法則のみが、われわれに自由を与えることができる。
(ゲーテ)

案山子その4



我が家の近くの水田において秘密裏に準備されていた農村ミュージカル(又は夜の水田スナック)の黒幕であろうと、この私が看破した人物の素顔がついに白日の下に曝されました。でも、まあ、よく見ればなかなか誠実そうな人物で、眼のあたりを白く残して日焼けした顔からは、水田を鳥獣から守るという自らの職務に誠実に取り組んでいる様子がうかがわれます。また、何処か遠くを見つめるそのまなざしには、ふるさとを愛し、農業に人生をかける男の気概が感じられます。ああ、日本の農業は、実にこの人物によって守られているのでした。(でも、眼は後で書き加えられた形跡が…。私の鋭い追求の目を逃れるための偽装工作か?)

宮沢賢治




雨ニモマケズ


雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテイル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萱ブキ小屋ニイテ
東ニ病気ノ子供アレバ
行ツテ看病シテヤリ
西ニ疲レタ母アレバ
行ツテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニソウナ人アレバ
行ツテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクワヤソシヨウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイウモノニ
ワタシハナリタイ

日々の戒め(31)


photo by yoshihiro ohmura

卑怯な考えの、
びくびくした動揺、
女々しい尻込み、
小心な嘆き。
そんなものは不幸を防ぎもせず、
お前を自由にもしない。
(ゲーテ)

別雷神社 お参り



別雷神社は、静岡市役所から西に延びる青葉シンボルロードと昭和町通りが交差するあたり、青葉交番の北側にあります。創建は273年(応神4年)ととても古く、京都の賀茂別雷神社の分霊社ということで由緒のある神社だそうです。このあたりが「安倍の市」といわれていた頃繁栄の守護神としてまつられたそうです。今日は「静岡青汁スタンド」の繁栄を祈願してまいりました。ぱんぱん。ところで、鳥居にかかるしめ縄ですけど、縄の部分が雲、〆の子(房のようなもの)が雨、紙垂(しで)が雷を表しているんだそうです。今年雨が多かったのは、このでかい房が原因じゃないだろうか。このあたりを調整すると、雨の量もコントロールできるような…。でも、造形的には大変すばらしい。

高村光太郎(11)


photo by yoshihiro ohmura

冬が来た

きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒になった

きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た

冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ


しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た